生成AI時代に注目の技術「プロンプトエンジニアリング」とは
はじめに
生成AIは、製造業、金融、医療、エンターテインメントなどさまざまな分野で利活用が進んでいます。オフィスでは定型業務やドキュメントの要約、レポート作成などのほか、新たな応用例が次々と出てきており、私たちの働き方や業務内容を大きく変えていく可能性があります。今回は、生成AIが最適な出力結果を出すための人工知能技術の1つであるプロンプトエンジニアリングについて解説していきます。
生成AIにより注目されているプロンプトエンジニアリングとは
プロンプトエンジニアリングとは、生成AI、特に大規模言語モデル(LLM)に意図する答えを生成させるため、自然言語による指示(プロンプト)を設計、最適化する技術のことを指します。生成AIの性能は、プロンプトの出し方や質に大きく依存するため、適切な入力を行うスキルが重要視されています。
プロンプト設計の基本的要素とは
プロンプトの設計には、生成する目的によりさまざまな方法がありますが、以下の4つがプロンプト要素の基本になっています。
Instruction(指示・命令)
実行してほしい特定のタスクを指示します。例えば「翻訳する」「要約する」「分類する」「並べ替える」など、どのような回答を求めているかを具体的に指示します。
Context(背景・文脈)
質の高い回答のため背景や文脈を入力します。生成AIは入力した背景や文脈に沿った出力を行います。
Input Data(入力データ)
回答に必要なデータを入力します。例えば人物の場合は年齢、性別、職業、趣味や出身地などのデータを設定することで、生成AIはより正確に理解した回答を行います。
Output Indicator(出力)
出力するタイプや形式を指定します。例えばテキストの場合は「タイトル」「見出し」「本文」、リスト化されたデータの場合は「csv」などを指定します。
これらの要素は常に必要なものとは限らずタスクによって異なります。タスクが複雑な場合は一度に回答を求めるのではなく、ステップを踏んで入力すると効果が上がる場合もあります。
このようなプロンプトの設計には「プロンプトエンジニアリングガイド」が参考になります。当ガイドには「Zero-shotプロンプティング」「Few-shotプロンプティング」といった初歩的なプロンプトをはじめ、応用テクニックの例などが紹介されています。
参考:プロンプトエンジニアリングガイド
プロンプトエンジニアリングの活用例
得たい出力に対するプロンプトは目的により創意工夫が必要です。プロンプトエンジニアリングの活用例をいくつかご紹介します。
創造的な文章作成、アイデア出し
例えばキャッチコピーを考える際、製品やサービスの特徴や利点、ターゲット、利用シーンなどを明確にし、入れたいキーワードやフレーズを組み込むことで、より望む結果に近づけることができます。
コード生成
プログラミングコードを生成する場合、使用するプログラミング言語、具体的なタスク、入出力の形式、必要な機能や要件を詳細に記述するなど、生成AIが理解しやすい指示が必要です。
情報収集
何のトピックに関するものか、どこの情報から、どの期間にかけて、どこに焦点を当てるのかといった詳細を指示に含めることで、より要求に沿った情報収集を行うことができます。業界分析、課題解決、製品開発、トレンドなど、情報収集する目的によりプロンプトも大きく変わります。
これらは活用の一部ですが、プロンプトエンジニアリングには、言語力や問題解決能力、生成AIに関する知識と理解などのスキルが求められます。特に出力結果に対しどのように改善すればよいか、方法やアイデアを考える創造的な思考が重要となります。
プロンプトエンジニアリングの注意点
プロンプトは一度設計すれば終わりというものではありません。生成AIの能力を最大限に引き出すため、出力結果や環境の変化に応じてプロンプトの効果を定期的に評価し、改善していくことが必要です。また入力データに個人情報や企業情報を含まれていないか、プライバシーやセキュリティにも注意が必要です。ガイドラインの策定などの措置が不可欠です。
まとめ
プロンプトエンジニアリングは、生成AIを効率的に活用し、業務の効率化、生産性向上、課題解決に貢献する重要な技術です。この技術は、企業が直面する問題を解決し、日々の業務や活動を効率的なものに変え、私たちの働き方にも大きな影響を与えることが予想されます。ただし、プロンプトエンジニアリングの使用にあたっては、信頼性や適切な使用方法に注意が必要なうえ、定期的な評価・改善が欠かせません。プロンプトエンジニアリングは、今後も生成AIの性能向上や活用範囲の拡大に寄与する重要な技術として、未来にむけてさらなる進化を遂げるでしょう。