効率的なアカウント管理を実現する「アイデンティティ・ガバナンスと管理」とは

はじめに

サイバー攻撃の手法が日々進化し、企業にとってセキュリティリスクが増加する中、企業資産ともいえるデータへのアクセスに使用するアカウント情報の管理はますます重要になっています。本コラムでは、従来のアカウント管理の課題、近年注目されている「アイデンティティ・ガバナンスと管理」の機能やメリットついて解説します。

働き方の多様化や、利便性のよいクラウドサービスの活用で複雑化するアカウント管理

働き方が多様化し、リモートワークの普及、パートナー企業との協業、契約社員や派遣社員など多様な雇用形態の変化がアカウント管理の複雑化を招いています。
さらに、転職市場が活性化するなど、雇用の流動化が加速し、入社・退職に付随する対応が頻繁に発生することも複雑化する要因になっています。
また、様々なクラウドサービスが台頭し、複数のサービスを活用する企業が増える中、部門や個人ごとに異なるサービスを利用するなど、システム管理者の運用負荷は増す一方です。

このような状況において、不正アクセスや情報漏洩を防ぎ、セキュリティを強化するためには、さまざまなユーザー、サービスに対してアクセス権限を細分化する必要があります。また、適切なタイミングで、円滑に権限を付与することも不可欠です。

しかし、従来のアカウント管理では、入社・退社・異動・昇格など属性変更のたびに、適切なアクセス権限を管理することや、相反する権限の組み合わせや様々な条件によるポリシーを定義して監視する、といった細やかな対応が難しいといった課題があります。

複雑化する管理はIT部門の負担となって対応が遅れがちになると、業務効率が低下するだけではなく、セキュリティリスクが高まります。さらに過剰な権限付与や不要なアクセス権も、セキュリティインシデントの原因となります。

従来のアカウント管理を補完する「アイデンティティ・ガバナンスと管理」とは

属性変更へ適切に対応し、セキュリティリスクを低減するため、注目されているのが「アイデンティティ・ガバナンスと管理（＝IGA：Identity Governance and Administration）」です。

従来のアカウント管理のサービスは、シングルサインオン（SSO）、多要素認証、アクセス管理など、ユーザーが複数のアプリケーションやサービスに簡単かつ安全にアクセスできるようにすることで、利便性の向上とセキュリティ強化を図っていました。

IGAは、従来の機能を補完するもので、ID管理（Identity Management）とIDガバナンス（Identity Governance）の概念を併せ持ち、アカウント情報の作成、変更、削除、およびアクセス権限付与を一元管理します。どのアカウントが、どのサービスに、どんなアクセス権限を持っているのか、アカウントが持つ権限は適切か、を把握するために必要な機能を提供します。

IGAが持つさまざまな機能

IGAの主要な機能には、IDライフサイクル管理、権限管理、ポリシー・ロール管理、アクセス要求管理、パスワード管理、監査、レポーティング・分析などがあります。

これらの機能により、これまで手作業で実施していた、利用者の職務権限や部署・部門に応じたアクセス権の付与を自動で行うことができます。業務範囲の変更や、一時的・恒久的なアクセス権の申請・承認・付与の一連の手続きも、手作業によるミスを低減し適切に行うことが可能です。

利用者が複数の職務を任され、それぞれの職務におけるアクセス権を持つようなケースでも、職務分掌のポリシーをあらかじめ策定し、コンプライアンス違反とならないよう相反する権限の付与を防止できます。

アクセス承認・付与の自動化をはじめ、不適切なアクセス権の変更や、権限のエスカレーションが行われた場合のアラート通知など、セキュリティリスクの早期発見をサポートする機能も用意されています。

IGAを活用することで、アクセス権限を可視化し、不適切な権限を持つアカウントの速やかな修正や変更ができるだけではなく、アカウントとアクセス権限の付与状況を定期的に見直すことで、安全な運用を実現します。

まとめ

働き方の多様化や、クラウドサービスの普及に伴い、複雑さを増しているアカウント管理において、IGAは、アカウント情報・アクセス権限を一元管理し、不正アクセスや情報漏洩を防ぎながら、コンプライアンスの遵守を強化し、セキュリティリスクの低減に役立つ仕組みです。従来のアカウント管理のサービスと、今回ご紹介したIGAは、それぞれの強みがあるため、組織のニーズに応じて選択、もしくは組み合わせることで、セキュリティと運用の効率性を最適化を検討してみてはいかがでしょうか。